作品紹介

発売年

山田太郎ものがたり 第4巻

表紙

<あらすじ>

山田太郎。私立一ノ宮高校2年(特待生)。成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能。そんな彼の唯一の欠点は、貧乏であること。ほぼ丸2年もの間、放浪の旅に出ていた貧乏画家の父・和夫が帰ってきた! しかし、シチリア娘のマリアが和夫の後を追ってきてしまい、山田家に愛の嵐が吹き荒れる…!?

<みどころ>

森永さんは旅行が大好きでした。30代にはイタリアのカプリがお気に入りで締め切りから逃げるように度々旅行していました。そのほか台湾、タイ、イギリスなど。大学も英文科で、英語だけは旅行のためにずっと勉強しているようでした。
この4巻に収録されている和夫を追いかけてくるマリアがイタリア人なのも、何度か旅行をしているからという理由。

その旅行好きの原点は中国だったと思います。学生の頃には、鑑真号という関西から上海に行くフェリーで何度も貧乏旅行をしていて、その大変さをうれしそうに話してくれたのを覚えています。鑑真号の一番安いチケットだと、狭くて汚い部屋で現地の人と雑魚寝だったとか、硬座という安い座席で電車の旅をしたら友達が血尿をだしたとか。
なぜそんな目にあってまで、わざわざ貧乏旅行をしたがるのか当時は謎でしたが、今考えると、彼女は人間のかっこわるいところを観察するのが大好物という、言ってしまうとかなり性格の悪い部分があったように思います(笑)貧乏とかの追い詰められたかっこわるいところに人間らしさが潜んでいて、それをじっと観察してニヤニヤすることを楽しんでいたのではないかと。
念の為フォローしておくと、そのニヤニヤには人間に対するかなりの愛が含まれているというのは、彼女の作品を見ていただけたらわかると思うのですが(笑) 特に中国やイタリアは気ままでおおらかな人が多くて、日本の常識から離れた人間らしさを笑うことを楽しみつつ、大好きな美味しいものを食べる!という、森永あいにとっては究極の娯楽があったのでしょう。

みどころのシーンは太郎が修学旅行で行った中国で、肉まんやゴマ団子などが安くておいしいことに感動しているシーン。そのあとのキャラクターの無断利用の時計やら、買った風船が膨らませると破裂するエピソードやら新世界の奇怪な乗り物やらのネタはほぼ実話です。ブログでも書いた、取材旅行で実際に体験したことがほとんど入っています。非現実なストーリーを描きながら、ちいさなエピソードはリアルなところが森永あいの作品の面白さの一つでもあります。

追記として、上海蟹は森永さんの大好物で、日本でも中国でも上海蟹の季節には必ず食べていました。

byポリーナよしこ


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